伊藤犬と長く暮らしていると、白い毛が増えたり、歩く速度がゆっくりになったりと、「年齢を重ねたんだな」と感じる瞬間がありませんか?
近年は栄養学や医療の進歩により、犬の平均寿命は延び、多くの子がシニア期を迎えるようになりました。しかしその一方で、加齢に伴う体や心の変化にどう寄り添うかは、飼い主にとって大切な課題です。ここでは、老犬の特徴や栄養管理のポイントをまとめます。
老化は自然なこと


犬は小型犬なら11歳前後から、大型犬では7〜9歳頃から「シニア」と呼ばれることが多いとされています。加齢は病気ではなく、誰にでも訪れる自然なプロセスです。ただし、代謝や活動量が落ちることで、太りやすくなったり、関節や心臓に負担がかかりやすくなったりします。飼い主さんにできることは、「老化を止める」ことではなく「老化に合わせた暮らし方を整える」ことです。
シニア犬に多い体と心の変化
年齢を重ねると、次のような変化が見られるようになります。
- 体型の変化:筋肉が減って脂肪が増え、基礎代謝も下がります。
- 被毛や皮膚:毛が白くなったり、乾燥してツヤがなくなることがあります。
- 消化機能:脂肪を消化しにくくなり、お腹をこわしやすい子もいます。
- 腎臓や心臓:慢性腎臓病や心不全のリスクが上がります。
- 関節や骨:関節炎が増え、歩くのを嫌がることもあります。
- 免疫力:病気にかかりやすく、治りにくくなります。
- 感覚器:視力や聴力が衰え、呼んでも気づかないことが増えるかもしれません。
- 行動や認知:夜鳴きや徘徊、トイレの失敗など、犬にも「認知症」のような症状が見られることがあります。



これらはすべての犬に一律で起こるわけではなく、個体差が大きいのが特徴です。だからこそ「うちの子らしさ」をよく観察することが大切です。
食事でできるサポート


1. カロリー管理
運動量や代謝が落ちると、必要なカロリーは若い頃より2〜3割少なくなります。太らせないことは、関節や心臓を守るためにも大切です。
2. たんぱく質はしっかり
昔は「シニア犬にはたんぱく質を控えるべき」と言われることもありましたが、今は腎臓病による制限の指示がない限り、良質なたんぱく質をしっかり摂ることが大切だと考えられています。筋肉や免疫を守り、病気やケガからの回復も助けてくれます。
3. 脂肪と必須脂肪酸
消化に負担をかけないよう脂肪は少なめにしつつ、魚油などに含まれるオメガ3脂肪酸はしっかり取りたい栄養素。関節や皮膚の健康、炎症の抑制に役立ちます。
4. 抗酸化成分
加齢による細胞のダメージを防ぐには、ビタミンEやC、βカロテンなどの抗酸化栄養素が有効だといわれています。認知機能の低下を遅らせる効果も期待されています。
5. 食べやすさを工夫
歯やあごが弱くなる子も多いので、柔らかいフードや香りの強いフードを選ぶと食欲が出やすくなります。「最近食べる量が減った」と感じたら、まずは食べやすさを見直してみましょう。
日常生活で気をつけたいこと
- 定期健診:年に2回は健康診断を受けて、腎臓や心臓のチェックを。
- 運動:短めの散歩でも毎日続けることが筋肉維持に役立ちます。無理は禁物ですが、体を動かす楽しみを残してあげましょう。
- 環境調整:滑る床にマットを敷いたり、段差を減らしたりして事故を防ぎます。
- 歯のケア:歯周病は全身の病気につながるため、ブラッシングや歯科チェックを習慣に。
- 心のケア:新しいおもちゃや簡単なトレーニングは、脳への刺激になり、認知症予防にもつながります。
- 安心できるリズム:急な環境の変化はストレスになります。引っ越しや新しいペットの導入は、できるだけゆっくり慣れさせてあげましょう。
飼い主さんへのメッセージ



大切なのは、変化を「老い」として恐れるのではなく「これからの暮らしを整えるサイン」として受け止めてみてください。
シニア期の犬と暮らす時間は、若い頃の元気いっぱいな日々とは違った穏やかな喜びに満ちています。
年齢を重ねても、犬は飼い主さんのそばにいられることが何よりの幸せです。
体のケアや食事管理を続けながら、小さな変化を見逃さずに寄り添う。それが愛犬の健やかなシニアライフを守る何よりの秘訣です。
この記事が健康で穏やかな老犬ライフの参考になれば幸いです。









コメント