ペットの食事でも人のように「ベジタリアン食」や「ビーガン食」という言葉を耳にする機会が増えてきました。人間と同じように動物にも環境や倫理を配慮した食事を与えたい、またはアレルギーや健康上の理由で肉を避けたい、と考える背景があるからです。

犬や猫にベジタリアン食を与えるのは大丈夫なのでしょうか?今回は栄養学の観点から整理してみましょう。
目次
犬と猫の「肉に対する必要性」の違い



まず大前提として、犬と猫は同じ「肉食動物」と見なされがちですが、栄養学的には大きな違いがあります。
- 犬は雑食に近い肉食寄り
長い年月、人と一緒に暮らしてきた犬は、穀物や野菜からある程度栄養を利用できるように進化してきました。そのため、きちんと栄養設計されたベジタリアン食であれば、健康に暮らすことも可能だと考えられています。 - 猫は完全な肉食動物
猫は動物性タンパク質や特定の栄養素(タウリン、アラキドン酸、ビタミンA、ビタミンB12など)を必須とします。これらは植物性食材だけでは十分に供給できません。そのため猫に完全なベジタリアン食を与えるのは非常にリスクが高く、栄養欠乏につながる可能性があります。


ベジタリアン食のメリットと課題
メリット
- 食物アレルギーがある犬では、特定の動物性タンパク質を避けられる
- 倫理的・宗教的な理由で肉を避けたい飼い主さんの価値観に沿う
- 原材料によっては消化しやすく、消化器が弱い子に合う場合もある
課題
- 必須アミノ酸や脂肪酸の不足が起こりやすい
- 合成栄養素(例:タウリン、ビタミンB12)をサプリメントで補う必要がある
- 長期的な安全性や健康効果についての研究はまだ限定的



必須栄養素のフォローアップが必要、ということですね!
与えるときの注意
もし犬にベジタリアン食を試したいと思った場合には、以下の点を必ず確認するようにしましょう。
- AAFCOやFEDIAFといった国際的な栄養基準を満たしているかどうか
つまり「総合栄養食」として認証されているフードかどうかが重要です。 - 必須栄養素が不足していないかどうか
タウリン、カルニチン、ビタミンB群などは植物性原料だけでは不足しがちです。そこで必須栄養素がサプリメントで補われているかどうか確認しましょう。 - 獣医師やペット栄養の専門家に相談する
特に病気を持っている犬や子犬、シニア犬では、栄養バランスの崩れが体調に直結します。必ず専門家のチェックを定期的に受けるようにしましょう。


まとめ
ベジタリアン食は「犬に限れば条件付きで可能」ですが、「猫には適さない」というのが栄養学的な共通認識です。
犬に与える場合でも、必須栄養素をきちんと満たす総合栄養食であること、そして定期的に健康チェックを行うことが欠かせません。
大切なのは、「飼い主の価値観」だけでなく「愛犬の健康」を第一に考えること。
ペットフードを選ぶときは、流行やイメージだけでなく、栄養学的な裏付けを確認してあげるようにしましょう。
コメント